「愛されるベス単」フード外しを深く知り、種類、改造法を学ぶ本

2022年2月21日

嗚呼、カメラ殿 第九回の主役は、本。「愛されるベス単」という書籍を紹介させていただきます。

 

この本は、手のひらサイズが読みやすい「現代カメラ新書」のNo.29にあたる一冊。

現代カメラ新書というのは「手作りカメラハンドブック」だとか「新しいフィルターの使い方」だとか「バルナック型ライカのすべて」だとか……いろいろと興味深い本が含まれるシリーズですね。

現代カメラ新書No.29 愛されるベス単

今回の主役である「愛されるベス単」は、その名の通り「ベス単」が主役の本となります。

愛されるベス単

 

ベス単と言えば、以下の写真のように「ソフト」な写真が撮れることで知られたレンズ。

愛されるベス単

もう少し「大きく」してみると、柔らかいソフト効果がかかっていることがよく分かるかと思います。

愛されるベス単

このレンズは、ヴェスト・ポケット・コダック(Vest Pocket Kodak)というカメラに搭載されており、日本では「ベス単」の相性で親しまれております。

ベスト判(127フィルム、4×6.5cm判)という言葉のもとになっているカメラでもありますね。

日本では「ヴェスト」ではなく「ベスト」という言葉で知られていますので、最良という意味の「BEST」だと思われている事もありますがそうではなく。「ヴェストのポケットにも入る小さなカメラ」としての「VEST」だったりします。

 

SDカードと比較すると、その小ささがよくわかっていただけるかと。

ヴェスト・ポケット・コダック

ジャバラ部分は折り畳めるので、収納時は本当にヴェストのポケットに収まってしまいそうなサイズとなります。

 

このレンズの幻想的な描写には高い人気があり、またフルサイズもカバーできるイメージサークルを持つことから、レンズだけを取り外し「改造レンズ」として現代も使用されています。

愛されるベス単
ベス単改造レンズ「Kマウント仕様」(カメラ本体PENTAX KP J limited

元々、ベスト判(127フィルム)という135フィルムより大きなフィルムを使用したカメラ用のレンズですから、フルサイズデジタルカメラでも使用できてしまうのですね。フランジバックも長いので、一眼レフで無限遠もしっかりと出ますし。

本日見ていただいた写真も、ベス単を取り外しKマウント仕様に改造したレンズをPENTAXのフルサイズデジタルカメラ、K-1で使用し撮影したものだったりします。(このレンズも、また後日紹介できたらと思います。)

 

こうした、ベス単を一眼レフ等で使用できるようにした改造品は、人気があるだけあって中古市場に流れてくることもあり、探そうと思えば意外と見つかったりするものです。(いつでもどこにでもあるものではありませんが……。)

ただ、ベス単を搭載したヴェスト・ポケット・コダックを探そうとなると、意外とややこしかったりします。

何故かと言えば「ヴェスト・ポケット・コダック=ベス単搭載のカメラ」ではないから。

ヴェスト・ポケット・コダックは様々なモデルがあり、その中の一部が「ベス単」と呼ばれるソフト効果をもつレンズを搭載しているのですね。つまり、ヴェスト・ポケット・コダックには、ソフト効果を得られないレンズもあるということ。

 

そしてさらにややこしいのは、ベス単はそのまま使ってもソフトな絵にはならず、搭載されているフードを外してはじめてソフト効果が現れるものだということ。

ベス単に搭載されたフードは、描写をしっかりとさせる用途のあるもの。

現代によく想像される遮光のためのフードとは形状が違い、レンズサイズよりも小さな穴の空いた金属製のものとなります。

フジツボフードが逆向きになったような形状と言えば、わかりやすいでしょうか。

 

つまりある意味では、ベス単のソフト効果はフードを外すことにより「出てしまう」というもの。それを狙った技法が「ベス単フード外し」と呼ばれ、流行したという歴史があるのです。

 

そしてそして、さらにややこしいのは「フードを外さなくてもソフト効果が現れるベス単」が存在することです。先程見ていただいた写真は、実はフードをつけたまま撮影したもの。言うなれば「ベス単フード外さず」で撮った写真です。

そのフード「外し」と「外さず」の差は、穴の大きさ。

以下の写真を見てもらうと分かる通り、外さずしてソフト効果を得られるフードの穴(右)は明らかに大きいのです。

愛されるベス単

そんなそれぞれの「差」を持つモデル。見分けようと思うとそれなりな知識が必要になります。ただ、なかなかベス単について、詳細に教わることができる場所はありません。

そこで役立つのが、現代カメラ新書のNo.29「愛されるベス単」というわけですね。

この本には「ツル単」だとか「ヒビ単」だとか、ベス単をさらに掘り下げ細分化した解説が満載。分解方法なども掲載されていますので、改造の資料としても最適です。もちろん、先程少し触れさせていただいたフードの穴の大きさの話も出てきますよ。

さらにノウハウや分類だけでなく、ベス単の歴史の話まで。ベス単を知れるだけでなく、読めば読むほどベス単を楽しめるようになっていく一冊なので、興味ある方はぜひ手に入れてみてください。

 

余談ですが、このベス単以外にもソフト効果を得られるレンズは存在していたりします。

その一つを、嗚呼、カメラ殿 第三回で紹介させていただいておりますので、合わせて読んでいただけると嬉しく思います。

こちらはベス単に比べると、ソフト効果が強くないレンズですがまた違った「味」をもつ素敵なレンズですよ。

 

私は他にもいくつかソフト効果を持つレンズを所持しておりますので、また紹介させていただきたく思います。ソフトフィルターなんかも紹介していきたいですね。ソフトフィルターにも面白い製品が本当に色々あり、結構集めましたので!

なんだかんだ私は、ソフト効果を持つものが好きなようです。