四角い箱型ボックスカメラ。ZEISS IKON BOX TENGOR 54/2(ボックステンゴール)
ボックスカメラというカメラがあります。
その名の通り箱型の、四角いカメラ。アンティークといって差し支えのない存在ですが、現代でも「動く個体」を入手することが出来ます。
嗚呼、カメラ殿 第十九回に紹介させていただくのは、ZEISS IKON BOX TENGOR 54/2。
ツァイス・イコンのボックステンゴールというカメラになります。
ZEISS IKON BOX TENGOR 54/2
とてもシンプルな見た目のこのカメラは、ボックステンゴールと呼ばれるドイツ製のカメラです。
元々C. P. Görz(ゲルツ)というメーカー名の元に作られた製品でしたが、ZEISS IKON(ツァイス・イコン)に引き継がれるかたちで製造が続いたそうです。
ボックステンゴールにはいくつかのモデルがあり、私が所有しているのは以下の特徴を持つもの。
フィルムピントは1m、4m。
調整可能なF値はF11、18、25。
シャッタースピードの調整は無し。(Bへの切り替えのみあり。切り替えはシャッターの上にある金属製レバーを使います。)
使用フィルムは120フィルム、6×9判。
何度見ても、非常にシンプルな見た目のカメラですね。
ボックステンゴールにはもう少し装飾性の高いモデルも存在していますが、この個体は本当にシンプルです。私の手持ちのカメラの中で、最もシンプルな見た目をしているかもしれません。
レンズはゲルツのFRONTAR(フロンター)、ファインダーは二つ
レンズ下にはツァイス・イコンのロゴ。レンズはゲルツ銘のFRONTAR(フロンター)というレンズですね。
まだ手入れ前ですが、レンズの状態はまずまずといったところでしょうか。
シャッタースピードも非常に遅いので、撮影には三脚を用いる事になるでしょう。ファインダーは縦撮り、横撮り用にそれぞれ用意されており三脚穴も二箇所あいている仕様がなかなか親切です。
シンプルな絞り
外観はまさに箱。
フィルムの装填は、この箱を引き出すように開けることで可能となります。
フィルム送りは、後ろの赤窓で確認するタイプですね。
赤窓を閉じる機構はありません。
本体上部には、デフォルトでは本体に内蔵されている引き出式の細長いプレートが二つついております。奥がピント、手前が絞りを変更するためのもの。どちらも上に引っ張り出す形で調整します。
絞りは今どきのカメラのように絞り羽根が開いたり閉じたりするものではなく、単純に大きさの違う穴を使用したもの。
プレートを引いて、それらを入れ替えるわけですね。
絞りの穴はシャッター幕の後ろにありますので普段は見えませんが、シャッタースピードが遅いので、レンズを覗き込みながらシャッターを切れば絞りの穴の大きさを目視することができます。逆を言えば、それくらい遅いシャッタースピードということですが。
このタイプはフィルムが120フィルムですから、現代でも使いやすいカメラになります。(ボックステンゴールには現代では入手困難なフィルムを使用するモデルもあります。)
状態の良い120フィルム使用機に出会えたというの、本当に幸せなことですね。まだ使用テストをしていないので、内部的な所がどの程度安定しているのかは不明ですが今からとても楽しみです。
撮影となると、6×9判ですからフィルム一本で8枚しか撮れません。シャッタースピードの遅さもありますので……なかなか緊張感のある撮影になるのではないでしょうか。
シャッター音は実に独特。何度も聞きたくなってしまう可愛らしさがあります。
幸い、フィルムを入れなければ連続して何度も聞けますので、しばらくはこのまま楽しませてもらいたいと思います。
こうした歴史を感じるカメラというのは、本当に面白いですね。