TAMRON Model A06、フルサイズで広角から望遠までカバーする優しさのレンズ
こんばんは。嗚呼、カメラ殿 第二回に紹介させていただきますは、TAMRONのAF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACROことModel A06。
いわゆる便利ズームとか呼ばれている、ズーム域がとてもとても広いレンズです。
ただこのレンズ、便利なだけではない。その特性から生まれる描写がなんとも心に残る「優しいレンズ」だったりするので、侮れません。
買ってしばらくは気がつけなかった、そしてしばらくしたら「嗚呼」と気がついた。そんな魅力を本日はお伝えできたらなと思い……それでは、よろしくお願いいたします。
TAMRON AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO(Model A06)
今回の主役であるModel A06には、デジタルに対応するために性能をアップしたModel A061という後継機が出ています。
そのA061も、もうだいぶ前のレンズ。
つまり、A06はそれ以前のレンズとなるわけで、さらに、幅広い焦点距離を持つ便利ズームですので…………解像感などは正直そこまで高いと言える製品ではありません。(現代においての話ですが。)
ただこのレンズ、優れている点は非常に多く、今でも実用性の高い製品だと個人的には思っております。
フルサイズで28mmから300mmまでカバーするという幅広いレンジ。
重量420g、 全長は(最も短くした時で)83.7mm。さらにズーム全域で最短撮影距離が0.49mと、非常にアクティブに使いやすい、優しい仕様なのです!
遠い、近い、広い、狭い。ありとあらゆるものが撮れる。
そのおかげで撮り逃しがなく、どんな場面に出会えるかわからない旅時などには、非常に重宝します。
レンズを多数持っていけない時……レンズ交換をしている余裕は無いけど、現れる被写体との距離感がいまいちわからない時…………などなど。このレンズに助けられる日は、今日まで幾度もありました。
解像感が高くないと言っても、それは今どきのレンズや単焦点と比べた時の話。
決して「写らないレンズ」というわけではありません。
拡大してしまうと、やや甘いと感じることもありますが、昆虫のデティールや質感もそれなりに表してくれます。
望遠側に寄れば背景を溶かすのが得意となるこのレンズ。
被写体をいい感じに浮き立たせてくれますし、絵作りの楽しさも感じられるので、私は結構好きなんです。
さてそれでは、作例をもう少し見ていただきましょう。
このレンズ、以下のような強い影は黒く潰れやすいので「上手く活かして絵を引き締めたいな」などと考えたりしながら、絵作りをしていく事が多いです。
その性質の影響か、雲が特徴的な空にはとても有効なレンズであるように思います。
ただ光が強くなるとコントラストが低下してしまうことが多いので、ちょっと悩んだりはしますが…………なんだかんだ、それもまた面白く。
逆を言えばそうした試行錯誤を楽しみやすい範疇に、性能がしっかり収まっているとも言えますね。いろいろと条件を変えて撮影しても、破綻することはめったにありませんので。
これだけのズーム域を持ちながら、見事なものです。
条件によっては、光の中に輪郭が溶け込むような結果になることも。
こうした描写は「いつでもありがたい結果」というわけではありませんが、はまるととても美しいですよね。
この現象は他のレンズでも度々見られるものではありますが、TAMRON A06は「綺麗に」出てくれる気がします。
たまに、以下のような感じで光に反応することもあるので、やはり光にはそれなりに警戒して向かいたいレンズではありますが…………。
ただ発生頻度はそこまで高くはく、不安に感じるほどではないでしょう。
フードをしっかりと取り付け、光を操意識していけば翻弄されることはあまりないはずです。
ここまでお話してきた性質がバランスよくはまると、ピント面はしっかり、背景は輝やいて輪郭が消えたような写真となり、同系色の描き分けをしっかりとやってくれます。
やはり、このレンズはいろいろと「きれいに収まるように」作られているという事が、良くわかりますね。
では、もう少し写真を続けさせていただきましょう。
やや「光でディテールが消えやすい」とも言えるこのレンズ。
影になる場所であれば、質感もしっかりと良い感じに写し出します。
なんとなく湿度を感じられて、川沿いという撮影環境を思い出させるこの雰囲気は、優しげで暖かみがあると言いたくなる柔らかさのおかげかもしれません。
本日の作例に使用しているカメラ、PENTAX K-1は立体感のある描写が得意ですから、少しのっぺりとしてしまうこのレンズの癖を上手く消化してくれている部分もあるのかもしれませんね。
そんな組み合わせで撮影する、影の中に部分的に光が入るような場面は、とても良く。
このレンズのズーミングは軽く、28mmから300mmまで一気に伸ばせますから、積極的に「輝くポイント」を探したくなってしまいますね。
その圧倒的なレンジの広さのおかげで、瞬間的な撮影はお手の物。
足湯に浸かりながら、ひなが口を開いた瞬間を。
走る車の助手席から、たまたま見かけた牛を。
このレンズだからこそ、場面場面で即座に、丁度よい焦点距離を選ぶことが出来ます。
あと……なぜか私はこのレンズで、水面を撮るのが好きなようです。
なめらかでありつつも、印象的。そして「抽象」が上手く強調される、そんなところが癖になるのかもしれません。
作例を見ていただいて分かる通り、シャープさという点は弱いレンズです。
ただ逆に、このなめらかな描写が活きた時は――――なんとも言えない雰囲気が生まれますので、ただの「レンジの広い便利なズームで描写はそこそこ」の製品だと思い込んでしまうのは、色々ともったいない気がします。
やはりこの背景の溶け具合はいいですね、なんだかとても落ち着きます。
周辺描写の甘さも良い感じで、雰囲気作りに力を貸してくれていますね。
何でも撮れる便利ズームのようで、このレンズ「ならでは」を求めてしまう。それが28mmから300mmという幅の中に存在すると思うと、とてもとても面白いレンズと言えるのかもしれません。
被写体にぐっと近づいた撮影の後に、こんなに広い空が撮れるのですから、便利さという点だけでも凄まじいものがあるのですけどね。
画角選びの面白さを知るにも、最適なレンズなのかもしれません。
そういえばこのレンズ、とても長く伸びます。ミョーンと長く。
でも自重で伸びてしまわないようにズームロックが搭載されているという…………本当に優しい、優しい優しいレンズなんです。
だからこそ気軽に持ち出せますし、絵作りも楽しめますし。優しい描写を見せてくれますし、本当に優しいですね。
それでは、お読みいただきありがとうございました。次回は、このレンズとはまた違った優しい描写を見せる、Tokina製のズームレンズを紹介させていただきたいと思います。